おせちの豆知識

【おせちの意味 完全ガイド】29食材とエリア・地域ごとのおせちをご紹介

【おせちの意味 完全ガイド】

お正月は家族が集まっておせちを食べるのが日本の風物詩になっています。ですが、何気なく食べているおせち料理にはそれぞれ意味があるということをご存じでしょうか?

「何となく聞いたことある」

「縁起がいいってことしか知らない」

そんな方も少なくないでしょう。この記事では、お正月の定番であるおせち料理の意味を詳しくご紹介致します。1つ1つの意味を知り、おせちに込められた思いや願いを理解しながら新しい1年の始まりを迎え入れましょう。

おせちの食材には意味がある!?

おせちの原型ははるか昔から存在していましたが、一般に広まってきたのは第二次世界大戦後からになります。そんなおせちの料理はそれぞれに意味があり、江戸時代から現代にわたり長く受け継がれてきました。

おせちの中身は豪華絢爛で、見た目の華やかさ、存在感の強さからお正月のメインと言っても過言ではありません。そこに縁起のいい意味を加えることで、新しい年を迎えるにふさわしい特別な料理へと変わります。

ご家庭や地域により品数も中身も変わりますが、全て合わせると20~30種類以上にも及ぶとされていますが、その全ての意味を把握しているという方は少ないでしょう。何となく知っているけど詳しくは分からないなんて方もいるかもしれません。

おせち料理のそれぞれの意味は、その食材の特徴をあらわしたもの、縁起のいい語呂合わせなどがほとんどです。新年のおめでたい席に、子孫繁栄や健康などを願いながら食べることで、その1年を健やかに過ごせるようにという大きな願いが込められています。

おせち料理は5種類に分類される

おせち料理と一言で言っても、その分類は5種類に分けられており、懐石料理のコースのようになっているのが特徴的と言えるでしょう。まずは「祝い肴」と呼ばれる三種です。これは数の子、黒豆、田作りで、新年を祝う料理としておせちには欠かせません。

次に酒のつまみにしたくなる「口取り」、魚介類を使用した「焼き物」、根菜類を豊富に使用した「煮物」、酢で味付けをした「酢の物」になります。

5種を全て入れているおせちがほとんどですが、実はおせちは「祝い肴」の三種だけで十分成立します。むしろ、この「祝い肴」がなければどれだけ多くの種類の料理を入れてもおせちとしては未完成となってしまうでしょう。

しかし、現代のおせちは様々な形のものがあり、こうしたおせちの基本を守っている和風のものはもちろんの事、洋風や中華風、和洋折衷と、オリジナリティ溢れるものも多くなっています。また、それぞれの意味の中で欲しいと思うものだけを選んで入れるという方もいます。今やおせちは、型にはまらない自由なお祝いのお料理になっていると言えるでしょう。

四段重の正しい詰め方とは?

おせちの正式な段数は四段とされており、料理の詰め方にも実はルールがあります。先ほどお話ししたように、おせちは「懐石料理のコースのような形になっているため、この詰め方もしっかりと知っておくといいでしょう。

一の重・祝い肴や口取り祝い肴の三種、かまぼこ、栗きんとんなどを入れます。
二の重・焼き物エビやタイ、貝など海の幸を使用した焼き物を入れます。
三の重・酢の物菊花かぶや紅白なますなどの酢の物を入れます。
与の重・煮物レンコンやゴボウなどの山の幸を使用した煮物を入れます。

祝い肴としてのおせち

おせちの祝い肴は、関東地方では「数の子」「黒豆」「田作り」の3種類が一般的となっており、関西地方では「田作り」「数の子」「たたきごぼう」が一般的と言われています。おせちの重箱に入る祝い肴は一体どんな意味があるのか、ここで詳しくご紹介していきます。

数の子

おせち料理の代表的な存在でもある数の子。数の子は必ずと言っていいほどどのおせち料理にも用いられています。もちろん普段でもスーパーなどで気軽に購入できるものではありますが、おせち以外では食べないという方も多く、お正月らしさが強いものと言えるでしょう。

数の子はニシンの卵で、ニシンは「カド(カドイワシ)」と呼ばれています。このカドが訛って数の子と言われるようになったとされています。ニシンは「二親」に例えられる事、数の子は卵の数が多いことから、多くの子宝に恵まれ家系が繁栄するようにという願いが込められています。

また、ニシンは「春告魚」と書き縁起がいい魚とされています。「二親」の響きから、両親の長寿を願っているという意味もあります。関東では濃い口しょうゆ、関西では出汁と薄口しょうゆでの調理が一般的となっていますが、家庭によりその味も大きく変わっているのが特徴です。

黒豆

おせち料理には欠かすことのできない定番の黒豆は、正式には「黒大豆」と呼びます。黒には邪気を払う特別な力があると古くから親しまれています。「マメ」に働くという意味があり、勤勉と健康を願っておせちに用いられています。

また、「まめに心を配って生活をする」「まめに暮らせますように」という、生活の豊かさを願った昔の人々の精神が込められています。三が日は主婦を休むために保存がきくものが好まれ、砂糖と醤油で煮る黒豆はおせち料理に最適とされていました。

年の数だけ食べ、体の中にある邪気を払い良い年を迎えるという地域もあります。さらに、場所によっては黒豆にシワが出るまで煮ることで長寿を願っておせちに入れるところもあります。邪気を払い生活を守るための黒豆は、「今も昔もおせちの中で人気が高い料理の1つです。

田作り(ごまめ)

「田作りって何?」「そんなの家のおせちに入ってない」なんて方もいるかもしれません。この田作りはごまめと呼ばれており、カタクチイワシの素干しをいって砂糖、しょうゆ、みりんで煮絡めたものの事です。

小さいながらも頭としっぽが揃っているカタクチイワシは縁起がいいものとされています。田作りは、カタクチイワシの肥料でコメが5万俵も収穫が出来たことに由来されています。「五万米」と書いてごまめと呼ぶ地域もあります。

五穀豊穣を願う田作りは、お正月に食べることで豊年豊作を願うという意味が込められています。現代では、この田作りにくるみを和えるなどのアレンジされたものも増えており、若い方にも人気があるおせちの鉄板料理です。

たたきごぼう

たたきごぼうはもちろん、煮物としてもおせちで大活躍しているごぼうは、地中に力強く根を張り成長することから「延命長寿」の象徴として扱われてきました。この、土地に根付く姿から、「家族が土地に根付き安定した生活が送れますように」という意味もあります。

また、普通のごぼうとたたきごぼうでは少し意味が異なるというのをご存じでしょうか。たたきごぼうの場合、ごぼうをたたいて開くという調理方法を行います。その開くという行為が開運に繋がっており、非常に縁起がいいとされています。

関東でもたたきごぼうを取り入れているご家庭も少なくはないでしょう。しかし、もともとは関西の祝い肴としておせちに入れられていました。このたたきごぼうは何もおせちだけの料理ではなく、普段の職隆右にも気軽に並べることが出来る人気の料理です。

口取りとしてのおせち

口取りとは、酒の肴のことをさします。つまみとして思わずお酒が進んでしまうような料理の事になり、おせちには欠かせない種類と言えます。この口取りは見た目が鮮やかな物、甘めに調理されたものが一般的となるでしょう。口取りという言葉を知らなかったという方も多いかもしれませんが、代表的なものが伊達巻きやかまぼこで、おせちには絶対的な料理がこれになります。

伊達巻

伊達巻きは、元々は長崎県の「カステラかまぼこ」と呼ばれている料理でした。このカステラかまぼこが、洒落た人を意味する「伊達者」が身につけていた着物のようだったため、伊達巻きと言われるようになりました。おせちの中でも特人気がある料理のつです。

重要な書物は巻物にすることや、巻いた形状が掛け軸を連想させるため、知性や文化の発展、学業成就などの意味があります。見た目の華やかさや存在感からも、おせちには欠かせないものと言えるでしょう。さらに、伊達巻きに使われている卵は子宝を象徴する食材にもなります。

豊富な知識を得るための祈願と共に、子宝に恵まれて子孫繁栄するようにという願いも込められています。丸い形は家庭円満、卵の黄色は豊穣という意味がありこれも子宝を連想させます。伊達巻きは、おせちに最適な縁起のいいものとして、昔から多くの方に好まれています。

紅白かまぼこ

おせちに限らず、おめでたい席やお祝いの席には必ずといっていいほどある紅白かまぼこ。その色合いを見れば、日本人ならだれしもが祝いの席を容易に想像できるでしょう。かまぼこはその形状が日の出に見えることから、古くからおせちに用いられてきました。

紅白のかまぼこは色により意味が異なります。紅は魔除け、慶びという意味になり、白は神聖、清浄をあらわす非常に縁起のいいものです。現代のかまぼこは、白い部分に絵柄や「祝」「寿」などの文字が入ったものもあります。

初日の出を連想させるかまぼこは、新年を迎え入れる時に欠かせない大切な料理と言えるでしょう。日ごろから食べ慣れているものでもあるため、老若男女問わず好まれており、難しい調理の必要もなく簡単に詰めることが出来るのも人気の1つと言えます。

栗きんとん

小さなお子様にも人気の高い栗きんとんは、おせち以外ではめったに食べる機会がないという方も多いのではないでしょうか。「きんとん」は、中国のまんじゅうの「餛飩」に由来しており、そののちに「金団」という文字があてられたとされています。

目を惹く鮮やかな黄金色が小判や金塊をあらわしていることから、金運上昇や財産を守る、豊かな年になるようにという願いが込められているのが栗きんとんです。栗は、臼でついて皮をむく作業の事を「搗ち(かち)」と言っていたため、「勝ち栗」として勝負に強い縁起物とされていました。

はるか昔、武士が戦で勝利するようにという願いを込めて、勝ち栗を用いられていたともされています。富を守り戦いに勝つという栗きんとんは、まさに新年にふさわしい縁起のいい料理と言えるでしょう。

昆布巻き

結婚式の引き出物や顔合わせなどにも用いられる昆布は、おめでたい席には欠かせない料理の1つです。昆布は「よろこぶ」のごろ合わせから縁起がいいとされており、昔からお祝いの席には必ずと言っていいほど出されてきました。

また、昆布は「広布(ひろめ)」という呼び名もあり、広めるにつながる縁起物としても知られています。北海道の特産昆布は「夷布(えびすめ)」という名称のものもあり、七福神の恵比寿様を連想させることから服を授かるという意味も込められています。

また、「こぶ」を「子生」の当て字にし、子孫繁栄の願いをかけるという意味もあります。さらに「養老昆布」の字を当て、中に二親と書くニシンを用いることで、両親の長寿を願うなど、様々な縁起を担いでいる特別な料理です。

チョロギ 

「長老喜」「長老木」と書くチョロギは、長寿を願う意味が込められています。原産は中国になり、江戸時代に日本に渡ったとされています。江戸時代は、おせちの料理の1つ1つに様々な意味がつけられた頃と重なっており、そこで縁起物とし取り入れられるようになりました。

おせちの中でも特別な存在感を放っており、黒豆の上に1つ2つ添えられていることが多いチョロギは、「名前を知らなかった」「飾りだと思っていた」という方も少なくありません。黒豆とチョロギは、赤と黒のコントラストが非常に美しく、おせち料理の華やかさをより一層引き立たせてくれます。

しそ科の一種で、根の先端に出来るくびれがある塊茎がチョロギです。元々の色は真っ白で、梅酢に浸すことで赤く着色を施しています。黒豆に添えることから、まめに働き健康な暮らしを送るという願いが込められています。

お多福豆

お多福豆はその名前の通り、沢山の福を運んできてくれることから、縁起物として扱われています。ソラマメの仲間であるお多福豆は、ふっくらとした見た目が「お多福(おかめ)」に似ていることから由来されました。おせち料理はもちろんの事、様々なお祝いの席で出されています。

おせち料理には黒豆がありますが、お多福豆はソラマメの一種であり、黒豆は大豆の一種です。お多福豆も調理の際に黒くしておせちに用いることから、魔除けの意味も持つとされています。

さらにお多福豆は栄養が豊富にあり、野菜で低カロリーながらたんぱく質やビタミンは豚肉の4倍以上もあるとされています。食物繊維なども多く含んでいるため、特に女性には嬉しい料理と言えるでしょう。福を願いながら健康な体を作るお多福豆は、新年のおせちとの相性は抜群です。

錦卵

錦卵は、2段重ねや市松模様、渦巻き状に仕上げるものなど様々あります。卵の黄身は「金」、白身は「銀」をあらわしており、「二色」に「錦」という字があてられた縁起のいい料理です。金と銀の糸で錦がおられる様子から、「富」「財宝」「豪華」の意味が込められています。

「錦糸卵」という料理がありますが、これは薄く焼いた卵を刻んだもので、この錦卵とは異なる料理になります。錦卵は卵のゆでたものを黄身と白身に分け裏ごししてから蒸す料理で、甘めの味付けがされており、ほんのり感じる塩気がお酒の肴に最適な逸品です。

明るく華やかな錦卵をおせちに取り入れることで豪華さもより際立ち、おめでたいイメージを更に強めてくれます。卵を使用したおせちは伊達巻きが一般的になりますが、この錦卵もお祝いの席にふさわしい非常に縁起のいい料理とされています。

タコ

関東より北では酢だこ、関西より南の地方はうま煮とするのが一般的な調理方法となっています。タコは過熱する事で体の色が真っ赤に変わり、吸盤は白くなるため、見た目が紅白で非常に縁起が良いものとされています。

タコの足は8本で、末広がりという縁起のいい数字でもあります。また、「多幸」という当て字を用いて「1年間の幸を多く」という願いが込められています。さらに、タコは敵から逃げる時に炭を吐いて身を守ることから、「苦難を煙に巻く」という意味もあります。

タコはおせちだけに限らず、お祝いやゲン担ぎの際にも広く用いられています。タコは英語でオクトパスです。「おくとパスする」という語呂合わせから、特に受験生のゲン担ぎとして知られており、また、タコの吸盤が幸福を吸い寄せるという意味もあります。

焼き物としてのおせち

焼き物は、主に魚介類などの海の幸を使用した料理を詰めます。海の幸を使用した縁起のいい料理は、おせちに限らずお祝いの席やめでたい席など、様々な場所で用いられることが多く、縁起のいい場には欠かせない品目と言えます。

えび

えびは縁起がいいものとしてどんな場面でもよく目にするのではないでしょうか。その意味も様々あります。まず、「海老」という漢字は長いひげを老人に例えか事が由来となっており、加熱し腰が曲がった姿から長寿の象徴とされています。「腰が曲がるほど長生きできるように」という意味は、多くの方が知っているのではないでしょうか。

また、えびの飛び出した目は「目出たし」、更に脱皮を繰り返す様子は「生まれ変わり」をあらわしているとされています。もちろん見た目が豪華になることも、おせち料理に取り入れられる1つの要因と言えるでしょう。

普段の食卓から海老は広く使われる食材ではありますが、おせちに入れられることの多い有頭えびは、こうしたおめでたい席の特別な姿であり、その存在感がおせち料理の特別感をより一層深めてくれています。

ブリ

成長によりその呼び名が変わることから出世魚として縁起が良く、おめでたい席にはよく用いられているブリ。立身出世を意味するものとしておせちに取り入れられています。ブリの呼び名は地方により異なり、関東では「ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ」、関西では「ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ」となっています。

ブリ大根や照り焼きなど、普段の食事にも用いられるため、おせちの中でも身近な料理として親しまれています。御節に入れる場合、主に照り焼きにして入れますが、地域によっては雑煮に入れて食べるという場所もあります。

癖がなく食べやすいブリは、小さなお子様にも人気があります。立身出世の願いが込められているブリは、昇任試験を控えている方、高校受験や大学受験、などはもちろん、これから起業をしようと考えている方たちにとっては非常に縁起がいいものとなり、新しい1年を迎えるにふさわしい料理と言えるでしょう。

は「めでたい」の語呂合わせで縁起のいい食べ物として広く知られています。また、七福神の恵比寿様が抱えているため、祝いの席やおめでたい席には欠かせない料理と言えるでしょう。おせちに入れる際、鯛は切り身を重箱に入れるのが一般的になりますが、尾頭付きを別のお皿に盛りつけるといった場合もあります。

また、鯛の慶びをあらわしており、姿が美しいことや味がおいしいということなどから、結婚の結納の儀式はもちろん、赤ちゃんのお食い初めの場などにも用いられています。お祝いの魚と言えば多くの方が鯛と答えるのではないでしょうか。

普段から頻繁に食される食材ではありませんが、こうした祝い事の席には欠かせないものであったり、恵比寿様が抱えている姿などは誰でも知っているため、日本人にとっては馴染み深い親しみのある魚と言っても過言ではありません。

ハマグリ

貝殻の形が栗に似ていることから「浜の栗」と呼ばれるようになり、それが転じてはまぐりという名称へと変化していきました。おせちに入れられるはまぐりは、ハマグリをゆでて出ただし汁と、醬油やみりんなどの調味料で煮込んだ「煮蛤」を詰めるのがほとんどではないでしょうか。

このハマグリは、例えどんなに多くの貝殻を集めても、対の貝殻しかピッタリと合う事はありません。その姿から、夫婦円満や良縁の願いが込められています。新しい出会い、今あるつながりを大切にするなど、男女のみに限らず、人と人とのつながりを強く結び付けてくれるという意味があります。

おせちに入れる料理でもありますが、場所によってはお吸い物やお雑煮などに入れ、お正月に出すという地域もあります。夫婦だけでなく、家族が仲良く暮らせるようにという願いが込められているといった地域もあり、新年を共に迎える家族とのお絆をより一層強めてくれるでしょう。

アワビ

アワビは高級食材としても有名で、普段から頻繁に食卓に出るようなものではありません。そのため、こうしたおせちなど特別なシーンで用いられることが多くなっています。アワビはその寿命が15年から20年ほどとされており、不老長寿の象徴とも言われています。

そのため、健康や長生きを願っておせち料理で好まれるようになりました。昨今は高級食材を贅沢に使用したデパートのおせちなどが人気が高く、こういったものには必ずと言っていいほどアワビが詰められています。

特別な食材だからこそ、こうした特別な場面にふさわしい存在感があり、普段から食べないようなもの珍しいものだからこそ、入っているおせち料理の特別感をさらに高めてくれるでしょう。この時期はスーパーなどでも売られることもあるため、買い物の際に目にする機会も増えてきます。

トコブシ

トコブシ」という貝はあまり広く知られておらず、「名前を初めて聞いた」という方も少なくないでしょう。トコブシはアワビの仲間であり、「フクダメ」という別名があります。このフクダメという名前から、「福がたまるように」という意味になり、縁起がいいものとしておせち料理で好まれています。

含め煮塩蒸しにするトコブシは、火を通してもアワビより固くならず、味が非常においしいため煮物にとても適しています。大きくても10cmに満たないものがほとんどで、アワビのようなごつごつした殻ではなく、小型の巻貝でなだらかな形をしています。また、空に空いている穴の数もアワビより多いため選別は簡単にできるでしょう。

トコブシは、「九欠の貝(くけつのかい)」という言い伝えがあり、昔は空に9つの穴が開いているアワビを食べることで長寿になるとされていましたが、トコブシはその代用品として多くの人々に重宝されてきました。

煮物としてのおせち

おせちに欠かせない料理の定番として知られている煮物は、様々な具材が使用されています。その具材の1つ1つの意味や、煮物全体としておせちに入れられる意味など、縁起物としてピッタリな理由がそれぞれあります。それらを詳しくご紹介致します。

お煮しめ・筑前煮

おせちの定番料理ともいえる煮物は、「お煮しめ」「筑前煮」が主な種類になります。それぞれの料理はお正月に食べるものとされていますが、お煮しめは骨付きのお肉を使用しますし、筑前煮は油でいためるという工程があったりと、調理方法や食材などは大きく異なります。

入れる具材や味付けの仕方なども家庭により異なるため、この煮物は「おふくろの味」として親しまれるおせちには欠かせない料理と言えるでしょう。また、このお煮しめは、おせち料理の元祖ともいわれるもので、おせちだけではなく、節句やお祝い事の席、多くの人が集まる場などで振舞われてきました。

煮物は様々な具材を1つのお鍋で調理するため、その姿から家族がいつまでも仲良く、末永く繫栄していくようにという願いが込められています。入っている食材1つ1つの意味は後程紹介しますが、そのどれもが縁起のいいもので、新年を祝うおせちにピッタリの特別な料理と言えるでしょう。

人参

鮮やかな色合いが目を惹く人参は、お祝いの席の定番ともいえる野菜です。おせちの煮物に入るときには梅の花をかたどった「梅花人参」「ねじり梅花」と呼ばれています。梅の花が持ち^府とされているのは、梅の花が咲く時期やイメージに由来しています。

まだ肌寒い早春に咲く梅の花。寒さに耐えながらも芳しい香りの花を咲かせている様子が、節操や清廉潔白などをイメージさせるため、非常に縁起が良いということになり、こうしたお祝いやおめでたい際の飾り切りに広く用いられるようになりました。

赤い色がめでたさをあらわしており、花が咲いた後に必ず身を付けるといったことからも、おめでたいものとして知られています。また、人参にように「ん」の音を含む食材は、運をつけるという意味でも縁起がいいとされています。

レンコン

おせちの煮物でよく見かけるレンコンは、なぜ使われているのかというのは諸説ありますが、そのレンコンに多くある穴が大きな意味があるとされています。れんこんの穴は真っすぐに開いており、「見通しがいい」ことから、「将来をよく見通せる」といった意味を持っています。

また、レンコンは仏教では神聖な植物とされています。極楽浄土の池で咲く姿から「穢れがない」という意味、また、美しく淡い桃色の花からは多くの種が採れるため「多産」「子孫繁栄」といった意味が込められています。そのため、おせちには最適な食材として親しまれています。

レンコンも人参同様に「ん」が含まれているため、運がよく縁起がいい食材とされています。複数の穴が開いている特徴的なレンコンは、普段の食卓でもよく使われる親しみのある食材ではありますが、おせち料理に入ると一気に豪華な見た目を引き立てる特別なものへと変わります。

里芋・八つ頭

里芋は、土から掘り起こしたときに多くの子芋がついています。その子芋の下には孫芋が多くあり、子孫繁栄を象徴するものとして縁起がいいとされています。また、里芋の丸い形が家庭円満のイメージとして考えられており、地域によってはあえてめんどりせずに調理するという場所もあります。

里芋には「人の頭になりますように」といった願いが込められていることから、男性には頭芋を取り分けたり、女性には子芋を取り分けることで子宝に恵まれるようにという願いをかけているといった地域もあります。

また、里芋の仲間の八つ頭も、親芋と子芋がひとつになって育ちことから、子孫繁栄を願うものとされています。また、末広がりの「八」を連想させるため、広く栄えるという意味があります。八つ頭も「頭」という漢字が入っていることから、人の先頭に立って活躍できるようにという願いが込められています。

たけのこ

たけのこは、成長の速度が速くすくすくと真っすぐに伸びていきます。おせちでは、この成長の早さから、子供の健やかな成長、立身出世、家運の向上などを祈願します。天に向かって真っすぐに伸びるその姿は、めでたさ、家族の健康など、様々な意味を持っています。

おせちに用いられているたけのこは、筑前煮に入ることもありますが、鰹節を使用した土佐煮としておせちに入ることもあります。地域や家庭により様々変わりますが、祝いの席にピッタリの食材であるということに変わりはありません。

たけのこも普段の食卓によくみられ、多くの家庭で親しまれている食材です。野菜がもつ独特な苦みなどがないタケノコは、豊富な栄養成分がゆでたことで逃げないというのも大きな特徴です。タケノコは便秘解消や美肌効果が高いものになります。適度に食べれば、効率的なダイエットにも効果的でしょう。

クワイ

おせち以外の場所ではあまり所送すことの無いクワイ。「畑のくり」とも呼ばれており、地下に伸びた塊茎部分と芽の部分を食用にします。ピンポン玉のような塊茎から突き出た芽が「めでたい」として縁起がいいとされています。

また、クワイの空に向かって真っすぐに伸びていく姿から、立身出世を意味するものとして祝いの席やおめでたい席に最適な食材として親しまれています。子株をたくさんつけている様子から、子孫繁栄を願うものとしても知られています。

さらに、縁起のいいクワイの形を崩さないように芽は残しておき、塊茎の皮をむき六角形や八角形に切ります。この形は、万年を生きる亀をかたどっており、「不老長寿」「長生き」といった願いが込められているともいわれています。

ゆり根

メインの食材というよりも、名わき役として人気の高いゆり根。ゆりの球根であるゆり根は、ほのかな甘みとほろ苦さが特徴的です。火加減によりシャキシャキとした歯ごたえになったり、ほくほくとした食感、ねっとりとした柔らかさへと変化していきます。

鱗茎が花弁のように重なり合っているゆり根は、「歳を重ねる」「仲が良い」に通じるとされています。家族や友人、周りの人々との平和を強めてくれるゆり根は、新年にふさわしい食材と言えるでしょう。また、子宝をイメージさせるということから子孫繁栄も意味します。

さらに、ゆり根は漢方薬に使用されています。薬効に優れているゆり根は、「無病息災」を願い、健康、長寿などを願うものという意味もあります。おせちに入るゆり根はこのように様々な意味を持っており、縁起のいい食材としておせちにとてもマッチしています。

こんにゃく

煮物の脇役としてはもちろん、こんにゃくをメインとした煮物などもおせちにオススメです。こんにゃくをおせちに用いる際には、真ん中に切り込みを入れてねじった「手綱こんにゃく」という形が一般的となっています。

この手綱の形はただの飾りという訳ではありません。手綱とは、馬を御するために人が使用する綱の事を指します。こんにゃくをこの手綱に見立てることで、手綱を締めるように自分自身の心を引き締め、己を厳しく律する事で戦いに備える心を養うとされています。

さらに、この手綱の形は結び目のように見えるということから、縁を結ぶという考えから「良縁に恵まれる」「縁結び」といった願いも込められています。ねじった形の手綱こんにゃくは箸でつかみやすいということや、調理の際に火が通りやすくなるといったメリットもあります。

酢の物としてのおせち

酢の物は、殺菌効果のある酢を使用しているため、基本的には長く保存がきく料理とされています。おせちは本来、保存のきく料理を詰めることで「かまどの神様を休ませる」「三が日は主婦を休ませる」という意味があります。見た目で華やかさを演出するもの、縁起のいい意味を持つ酢の物は、おせちの名わき役として欠かすことのできないものとなっています。

菊花かぶ

かぶを菊の花のように見立てて、細かく美しい切り込みを入れる菊花かぶは、繊細で日本らしい雰囲気を漂わせています。程よい酸味とシャキっとした歯ごたえは、箸休めにピッタリの一品と言えるでしょう。菊花かぶが、おせちに限らず様々なお祝いのお料理に用いられています。

菊の花は元々は中国から流れてきましたが、今では日本を代表する花として知られています。はるか昔から、お祝い事には欠かせない花とされており、縁起が良く、邪気を払うという意味が込められています。

さらに、菊花かぶは不老長寿を願う定番のおせち料理でもあります。真っ白なかぶの中央に、唐辛子の輪切りをのせたもの、株を赤く染めるなどして紅白の色合いを演出するという地域もあります。日本らしさを詰め込んだ菊花かぶは、まさに新年を祝うおせちに欠かせない特別な料理と言えるでしょう。

紅白なます

おせちの代表的な酢の物と言えば紅白なますです。紅白の色合いがめでたさを象徴し、新年を迎え入れるおせち料理の定番でもあります。なますという名称は、かつては大根、人参、生の魚、酢を材料としており、そこからなますという名前がつけられました。

紅白の色が水引のようであることから、縁起が良くお祝いの席にピッタリの料理となっています。この紅白なますは、大根、人参の他にも地域により特別な材料を使用しているという場合も多くあり、「地元の味」「おふくろの味」としても知られています。

魚はなく、大根、人参刻んだ柚子で会えるという場所もあります。同じ料理であっても場所により大きく異なっているなますは、生まれ故郷を思わせる特別な料理でもあり、新年の迎え入れると同時に昔の懐かしさを感じることが出来るものとなっています。

コハダの粟漬け

コハダはニシンの仲間で、ブリト同じ出世魚となります。関東では「シンコ→コハダ→ナカズミ→コノシロ」といったように名前が変化していきます。そのほかの地域では、ツナシ、ハビロ、ドロクイ、ジャコなどと呼ばれています。

コハダの粟漬けは、コハダを酢締めにし、もち粟に漬けた料理です。粟は米、麦、まめ、黍、稗の5つの種類の穀物の方策を願う五穀豊穣をあらわしています。出世魚で、立身出世などを願うという意味も込められており、充実した1年を過ごせるようにという思いが強く込められた料理となります。

コハダの粟漬けは主にお正月に食べることが多く、普段から食酢ということはあまりないでしょう。また、おせちの中でも必ず取り入れているものというわけではありません。しかし、地域によっては、おせちの定番ともいわれており、多くの方に親しまれている酢の物になります。

段数が変われば詰める場所も変わる

基本のおせちは四段」というお話を記事冒頭でしましたが、全てのおせちは四段という訳ではありません。それぞれ段数が異なれば、料理を詰める場所も変わります。

三段の場合、一の重に祝い肴とくと取りを一緒に入れ、二の重に焼き物と酢の物を一緒に入れます。三の重で煮ものを入れるという形が一般的な三段重のおせちになります。

五段の場合、一の重から与の重の詰め方は変わりありません。一段増えた五の重には何も入れず空にしておくようにします。これは新年の福を詰め込むためと言われています。この段数に関する内容など、下記の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

地域特有のおせち料理も

こちらの記事で紹介した30種類のおせち料理は、主に全国で用いられているものになります。しかし、中には地域特有の特別な料理を入れているという地域もあるでしょう。その場所では当たり前のものでも、他の地域から見れば珍しく不思議に感じるようなものもあるかもしれません。ここで、全国の中でも特に特徴的なおせち料理をご紹介致します。

長崎県のくじら料理

長崎県のおせち料理にはクジラが用いられています。昔は休職にまで出ていたくらい一般的なものでしたが、現代では食べる機会はめったにないほど貴重なものとなっています。末広といい、クジラの中でも特に高級な部分を薄くスライスしたものが、お祝いの席では特に好まれています。「クジラのように太く長く生きる」という意味が込められており、縁起がいいものとして知られています。

青森県のいちご煮

果物のイチゴの事ではありません。青森県の中でも特に八戸地方では、お祝いの席はハレの日によく出されるのがこのいちご煮です。ウニとアワビのすまし汁の事で、高級感と特別な存在感が特徴的です。ウニがイチゴに似ているためこの名前が付けられました。

岩手県の紅葉漬

昔から豊富に取れる鮭を利用した郷土料理の紅葉漬は、鮭の身とはらこを醤油で漬けたものです。お祝いの席、お正月には欠かすことのできない料理として知られています。鮮やかな紅色をしていることからこの名前が付けられており、縁起のいいものとしておせちにも使用されています。

京都府の棒鱈の煮物

京都府では、棒鱈の煮物がおせちの定番として取り入れられています。棒鱈は「今年1年間、食べ物に困ることがありませんように」という願いが込められています。調理に時間がかかってしまうという手間がありますが、家族、親族などのゲン担ぎのために、多くの家庭でこの棒鱈の煮物がおせちに用いられています。

沖縄県の田芋田楽

沖縄県では、お正月に田芋の田楽を食べる習慣があります。この田芋の調理方法は様々ありますが、意味合いは里芋と同じで、子孫繁栄を願って取り入れられています。田芋はとろりとした食感が魅力的で、甘みもあり食べやすいことから地元の方々に広く長く愛され続けています。

まとめ

おせち料理のそれぞれの意味をご紹介致しました。家庭のおせちでは、入っているもの、入っていないものなどそれぞれあるかもしれません。しかし、その全てが家族の健康や幸せ、子供の成長、両親や祖父への長寿を願うなど、非常に縁起のいいものになっています。おせちはお正月の定番として、はるか昔から日本人に愛されてきました。

新しい1年の幕開けだからこそ、縁起が良くおめでたい料理を食べることで、1年の始まりが明るい幕開けとなるでしょう。プロが作った豪華絢爛なおせち、家庭の味がたっぷり入ったおせちなど、その種類は豊富にあります。この記事でご紹介した意味をそれぞれ噛みしめながら、新しい1年を迎え入れてみてはいかがでしょうか。

【おせちの歴史完全ガイド】おせちの由来やその歴史、重箱の意味など徹底解説!

【おせちの歴史完全ガイド】

「なんでおせちって名前なの?」

「入っている食材に意味はあるの?」

「いつからおせちって食べてるの?」

こんな疑問を感じたことはないでしょうか?

おせちは日本のお正月の定番として、多くのご家庭で親しまれています。地方によっての特色や風習などが加わることもあり、おせちを食べることで遠く離れた故郷を思い出すという方もいるでしょう。

自宅で何日も前から準備を始め、1つ1つを手作りするご家庭。

デパートや料亭など、高級なおせちで新年を迎えるご家庭。

おせちの形はそれぞれですが、どんな歴史があり、どのようにして一般家庭に普及してきたのか知る方は非常に少ないのではないでしょうか?物心ついたころから、おせちはお正月に食べるものとして当たり前のようにあったという方がほとんどでしょう。

この記事では、お正月の風物詩の代表とも言えるおせちの歴史、その由来などについて、詳しく探っていきます。

おせちとは?

おせちは、ただ単に新年を祝うために食べるものではなく、もともとは神様へお供えするための供物料理です。この神様は年神様と言い、「歳徳神」とも呼ばれています。年神様は高い山から降りてきて、家々に新年の幸せをもたらしてくれます。

昔の人々は先祖の霊が田の神や山の神、お正月には年神様になって子孫の繁栄を見守ってくれていると信じてきました。そんな年神様へのおもてなしとして準備されるのがおせち料理です。

例えば同じように新年は鏡餅を飾りますが、これも年神様へのお供えとされており、お正月に行う風習は年神様にまつわるものが数多く存在しています。

なぜ重箱なの?

おせち料理とは、豪華な見た目が目を惹く印象が強いですが、重箱に入れられているといったイメージも強いのではないでしょうか。一般的に最も多いのが三段重ですが、四段や五段のおせちなどもあります。

  • 福を「重ねる」、めでたさを「重ねる」という意味が込められている
  • お年賀に来られるお客様へのお料理として出しやすい
  • 保存がきく
  • 「喰積」と呼ばれる祝い肴を重箱に入れていたことが起源

上記のように、始まりの意味や理由などは非常に様々あります。重箱に入った豪華絢爛な料理は、新年を迎える祝いの席にとてもふさわしく、縁起のいいはじまりにピッタリと言えるでしょう。

おせちの正式な段数は?

先ほども触れたように、おせちには様々な段数のものが存在しています。正式な段数は四段とされており、上から順番に一の重、二の重、三の重、予の重と呼びます。四段目を「四の重」と呼ばない理由として、この四が「死」を連想させる発音と重ねり縁起が悪いということが挙げられています。

また、各々の段に詰める料理の数は、5、7、9種類と奇数で詰めると縁起がいいと言われています。新年を迎え入れるためのおせち料理は、こうした細かな部分でも縁起の良さを重視しているのが非常に特徴的です。

「おせち」の由来とは?

そもそもこのおせちという名前は、暦上の節句を意味する言葉になります。季節の節目の「御節句」、「御節料理」として作られたもので、現代で年の初めの一番最初の節供に作られるものとしておせち料理があります。

おせちは漢字で「御節」と書きます。暦上の「せちく」に「お」つけた【おせちく】という言葉から「おせち」という名前になったとされています。

また、おせち料理は作り置きが可能な食材が非常に多く用いられています。これは、「お正月にかまどの神様を休ませることが出来る」という意味や、「三が日は主婦を家事から解放させる」といった意味も込められているんです。

五節句とは?

五節の「節」とは、もともとは中国の唐の時代に定められた季節の変わり目の事を指します。暦の中では、奇数が重なる日は陰になる日とされ、邪気を払うための「節会」という催し物が執り行われていました。

日本では1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕(しちせき)、9月9日の重陽(ちょうよう)といった5つの節目に邪気を払うための宴が開かれるようになり、これが五節句と呼ばれるようになりました。

1月1日の元旦は1年の中で最も別格な日となっており、正月は7日が五節句のなかに取り入れられています。現在この制度は廃止されていますが、今でも年中行事の一環として定着しているものもあります。

1月7日・人日七草の節句七草がゆを食べる
3月3日・上巳桃の節句・雛祭白酒や菱餅を「食べる
5月5日・端午菖蒲の節句・端午の節句菖蒲酒。関東では柏餅、関西や中国ではちまきを食べる
7月7日・七夕七夕(たなばた)索餅。現代では素麺を食べる
9月9日・重陽菊の節句菊を浮かべた酒などを飲む

地域などにより細かな部分は変わりますが、上記のような風習は今でも根強く残っており、中でも桃の節句や端午の節句は、子供たちの健康と成長を祈る祝い事として欠かせないものとなっています。

祝い箸とは?

御節を食べる際に一緒に準備されるのがこの祝い箸です。実は、この祝い箸も年神様にまつわる風習の1つとなります。

祝い箸は、両方の先端が細くなっているため、別名「両口箸」と言われています。一方は神様が、もう一方は人が使用するとされており、「神人共食」という意味になります。

新年に訪れ幸福をもたらしてくれる年神様と供に食事をする。こういった大きな理由があるのがこの祝い箸です。また、神様と共に食事をするため、使用していない方の先端を取り箸として使用することはタブーとされているので注意しておきましょう。

なぜおせちを食べるの?

先ほどご紹介したように、おせちを食べるのは、神様を迎え入れ共に食事をし、幸福や無病息災を願うためとされています。しかし、お正月の料理として知られているおせちですが、実はもともとは大みそかに食するものでした。

「神様を迎え入れて料理を供え、ごちそうを共に食し無病息災を願う」という行いは、年はじめではなく年の終わりに行っていました。

今でも一部地域では、大みそかの日に「年取り膳」を食べるという風習が残っている所もあります。これは大みそかの日没以降に降臨される歳徳神と共食するという習わしですが、現代では多くの地域で大みそかに食するものが「年越しそば」に取って代わっています。

おせちの歴史

おせちは非常に古い歴史を持っていますが、そのルーツや始まりを詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。ここでは、新年に食するおせちの始まり、どのように生まれどのように広がっていったのかなどを詳しくご紹介致します。

おせちの始まりは弥生時代

おせちの起源は、なんと弥生時代まで遡ることになります。縄文時代の終わりごろ、中国から稲作が伝来しました。それが弥生時代にかけて広がっていき、それまでは狩猟中心だった生活が農耕中心社会へと変化していきました。

また、中国から節を季節の変わり目とする暦も伝わり、節ごとに神様へ収穫を感謝するようになっていきます。ここで「節供」といわれるお供え物をする風習が誕生しました。先ほどご紹介したように、この節供としてお供えするための料理を「節供料理」といい、これが現代のおせち料理の始まりとされています。

定着したのは奈良時代から平安時代

弥生時代から始まったおせち料理ですが、それが風習ではなく行事として定着したのは奈良時代から平安時代になります。この時期、節の儀式が宮中行事として行われるようになりました。中国「唐」の暦法にもとづき、節目の日である節日に、邪気を払い不老長寿を祈る儀式として「節会」が催され、ここで「御節供」と言われる料理が振舞われました。

特に記事冒頭で紹介した五節句は非常に重要視されており、「五節会」と呼ばれていたとされています。

  • 1月1日・元旦
  • 1月7日・白馬(あおうま)
  • 1月16日・踏歌(とうか)
  • 5月5日・端午(たんご)
  • 11月・豊明(とよあかり)

当時は上記のような五節句でしたが、11月だけ日付が決められていません。11月の豊明は、新嘗祭の翌日の辰の日に行われており、新嘗祭が問題なく終了した後に「豊明節会」という節句行事が行われます。そのため、他の節句とは異なり、新嘗祭翌日の辰の日という日になっています。

江戸時代にはおせちが定番に

江戸時代に入ると、この五節句はそれぞれ祝日として幕府から定められるようになりました。ここで、1月7日、3月3日、5月5日、7月7日、9月9日という、現代の節句の形が出来上がりました。また、「御節供」が庶民の間でも広がり始め、この1年の中で5回の節句の日に豪華な料理が振舞われるようになっていったとされています。

その中で、新年を迎える最も重要な人日の料理が、正月料理として定着を始めました。江戸時代後期に入るころには、それぞれの料理に意味が込められるようになっていき、新年を祝うための食べ物になっていきました。ここで、大みそかにおせち料理を家族で食べるといった風習も誕生します。

また、重箱スタイルが確立したのも江戸時代だとされています。江戸時代から中期の間では、酒宴では重箱が用いられていました。その後は硯蓋といわれるお盆状の器が用いられることが主流となっていきましたが、江戸時代末期には硯蓋の使用がなくなり重箱詰めるのが一般的になっていきました。

「おせち」と呼ばれるのは第二次世界大戦のあとから

江戸時代の末期には現代のおせちに大分近い形になってきました。しかし、この料理が「おせち」と呼ばれるようになったのは第二次世界大戦後とされています。それまでおせちは「喰積」や「蓬莱」という名称でした。

一般的に家庭で作る料理として広がっていましたが、第二次世界大戦後からデパートで重爆入りのおせち販売がはじまりました。ここで「おせち」といった名前で振り出されたことがきっかけとなり、広く一般的な名称として使われるようになったとされています。

おせち料理にはそれぞれ意味がある

おせち料理のそれぞれの意味をご存じでしょうか?何となく聞いたことがあると感じる方もいるかもしれません。先ほども触れたように、一般家庭でも食べられるようになった江戸時代、新年を祝うおせち料理に意味が込められるようになり、それが今の時代まで引き継がれています。

もともとは神様へのお供え物として作られた料理だったり、邪気を払う節句日に振舞われた料理であったおせち料理。他とは違った特別な存在であるということは現代でも変わりません。それぞれの意味を知ることで、お正月におせち料理と食べることの大切さを理解することが出来るようになるでしょう。

キーワードは奇数

おせち料理はとにかく縁起がいいものを詰め込んだ料理になります。昔から、奇数は縁起がいい数字として広まっていました。先ほどもお話ししたように、おせちは正式な段数が四段ですが。なぜ奇数ではないのかと不思議に思う方もいるかもしれません。この四段が正式な段数とされているのは、「完全な数字の三に、さらにもう1重ねた数」という理由があります。

この数字の三とは、昔から非常に縁起がいいとされており、そこにさらに付け加えることでより縁起がいい信念を迎えられるようにという意味が込められています。

日本のことわざや慣用句でも、この三という数字はよく使われています。「三度目の正直」「御三家」など、意識せずとも自然にこの三という数字は身近なものになっており、さらにこのおせちに欠かすことのできない「祝い肴」と呼ばれている料理も三品で、徹底してこだわった縁起の良さを感じることが出来ます。

料理ごとの持つ意味

「おせち料理にはそれぞれ意味がある」ということを聞いたことはありませんか?健康でいられるように、子孫繁栄を願ってなど、様々な意味がこのおせち料理の1つ1つに込められています。また、おせちは重箱の何段目に何を入れるかということもしっかり決まっています。それぞれの段には何が入るのか、さらにその料理の意味は何なのかを詳しくご紹介致します。

一の重

一の重に詰めるものは、祝い肴と口取りです。祝い肴は「数の子」「黒豆」「田作り」の三品、口取りは「栗きんとん」「伊達巻き」を入れるのが一般的になり、きんぴらごぼうや紅白のかまぼこなどもこの一の重に詰めます。羊羹や観点などの甘味類などを入れるというところもあります。

数の子子孫繁栄を願います。ニシンの子であることから、「二親健在」という意味も持っています。
黒豆まめに、勤勉に働くという意味が込められています。
田作り豊作への祈願をこめた料理です。
栗きんとん栗は昔から「勝ち栗」と縁起がいいものとして扱われていました。
伊達巻き見た目が巻物に似ているため、知識が増えるようにという願いが込められています。
昆布巻きこぶは「よろこぶ」に通じ縁起が良く、「子生」と書き子孫繁栄の願いも込められています。
紅白かまぼこかまぼこは日の出を象徴しており、白は神聖、赤は喜びやめでたさを表しています。

二の重

二の重には主に海の幸の焼き物を詰めていきます。ここで一般的によく使われているものがエビ、タイ、ブリなどになります。場所によっては、一の重で入れた口取りを二の重に入れるという場所もあります。

エビその見た目から「腰が曲がるほど長生きするように」という願いが込められています。
タイ「めでたい」という語呂合わせからきており、お祝いの席には欠かせない食材の1つです。
ブリ大きさによってその呼び名が変化する出世魚でもあるブリは、立身出世を願う意味で用いられています。
貝類おせちではハマグリが多く用いられます。左右の貝殻がぴったり合うのは1つだけのハマグリは、夫婦円満の象徴とされています。不老長寿を願ったアワビ、「福がたまるように」と願いをこめられたフクダメなどもあります。

三の重

紅白なますなどの酢の物を入れます。おせちの重箱の段数が三段だった場合、四段目に入る煮物がここの三の重に入ることになります。酢の物は日持ちするため、ご家庭でおせちを作る、ここから作り始めるという家庭も多いのではないでしょうか。

紅白なます赤と白のめでたい色合いで、のし紙などの水引に通じるものとして使われています。ニンジンや大根の根菜類のように根をしっかり張ることで、家の土台を強くするという意味もあります。
ちょろぎ漢字では「長老木」「長老喜」「千代呂木」と書き、長寿への願いが込められています。たいていは黒豆の上に1つ2つ載っているという場合が多く、赤と黒のコントラストが美しさを引き立たせます。
酢蓮レンコンはいくつもの穴があり向こう側を見通せることから、見通しの良い1年を過ごせるようにという願いを込めておせちに使われています。
菊花かぶ日本を象徴する菊は邪気を払い、不老長寿の意味が込められています。また、赤く染めた菊花かぶもあり、紅白を表すということもあります。
コハダ粟漬けコハダはブリと同じ出世魚です。粟は五穀豊穣として豊作を祈願する穀物で、食べ物に困ることの無いようにという意味が込められています。

与の重

里芋、クワイ、レンコンやニンジンなどの山の幸を使用して付く割れた煮物が与の重に入ります。他にも、ごぼうや八つ頭などもおせちの煮物でよく使われている食材になります。

里芋数多くの子芋がつく里芋は、子孫繁栄を願う意味があります。
クワイ大きくすらりとのびた芽をもつクワイは立身出世の象徴とされています。子株が多い様子は子孫繁栄をを表します。亀の甲羅に型取り不老長寿も祈願します。
八つ頭末広がりの八つく上に八方に頭があることから、先頭に立って活躍することを祈願する食材になります。親芋と子芋が一つに育つ様子は子孫繁栄を表しています。
ごぼう地中深くに根を張るごぼうは、家の基盤が堅牢であることを願うとされています。
筑前煮たくさんの具材や肉を1つの投げで作る筑前煮は、家族みんなが仲良く暮らせるようにという願いが込められています。

五の重

地域によっては後の重を使う場所もあるでしょう。しかし、ここには何かを詰めるということはありません。五の重は控えの重として空にしておくのが一般的になります。おせちは年神様へのお供え物です。そのため、年神様から授かった福を詰めるために空にしておくとされています。

将来の繫栄余地という意味を込めて空にしますが、デパートなどで売られているおせちはこの控えの重に巡り合うことはあまりないでしょう。最近では、この五の重に家族の好物を入れるといった家庭もあります。

昔のおせちと現代のおせちの違い

昔のおせちは和を中心として、いわば「日本のお正月の象徴」のような存在でした。しかし、最近ではその中身も大きく変わってきています。デパートなどで売られているものの種類は非常に豊富になってきており、和風の昔ながらのおせちはもちろん、洋風のものや中華風のもの、様々な食材を盛り込んだ和洋折衷のミックスおせちなどもあります。

さらに、冷凍配送が主流となってきた昨今では、産地直送の新鮮な地元の食材や、普段なかなか目にする事すらないような高級な食材まであり、まさにお正月の豪華なご馳走にふさわしいものが増えてきました。

現代は昔に比べ家族の形も大きく変わりつつあります。仕事で実家に帰れず、お正月をいつもと変わらないスタイルで過ごしている方も増えてきました。そのため、おひとり様用のおせちなども増加傾向にあります。昔のおせちは大きな重箱に入った料理を大人数で一緒に食べるというのが当たり前でしたが、そういった昔ながらの風景も大きく変化しています。

しかし、やはり日本人にとって、「お正月はおせち料理」というのは何年たっても変わることはありません。デパートや料亭のみでなく、コンビニやスーパーなどでもおせち料理の販売を行っており、やはりお正月と言えばおせちという形はこの先もずっと廃れることはないでしょう。

まとめ

おせちの歴史をさかのぼると、その始まりは弥生時代にまで遡っていきます。ですが、おせち料理という名前で一般にも大きく知れ渡ったのは終戦後という最近の出来事とされています。

江戸時代には様々な意味を持ち始め、めでたさや豪華さを一つに凝縮したおせちは、新しい1年の始まりにふさわしい料理として、これからも日本人のお正月を彩ってくれるでしょう。